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法教育制度を使っての裁判傍聴
2025年7月某日、人生で初めて刑事事件の裁判傍聴をしてきました。
実は高校生の時、バイト先で知り合った子が「私、裁判傍聴が趣味なんだよね~」と言っていたのですが、その時に連れて行ってもらっていたら…とすでに30年弱経っているのに今更後悔したわけですが(笑)まぁ今からでも行ける!ってことで行ってきました。
ただし、普通に行くだけじゃ「何がなんだかわからないまま終了する」のがオチ。
そんなわけで「法教育」の制度を利用して参加することにしました。
今回お世話になったのは「東京第二弁護士会」さんです。
中学生以上の学生(保護者含む)を対象に、弁護士さんが裁判の流れを事前に説明し、その後実際の裁判を傍聴、最後に事件について解説してくださるという素晴らしい内容です。
しかも原則無料で実施されているという(弁護士会によって異なります)。
今年からわが子も中学生となりましたので、学校のお友達数名に声をかけ、一緒に参加することにしました。
当日は第二弁護士会に集合
集合場所に行ってみると、学校名の入った案内板が!これだけでなぜかテンションの上がる保護者達(笑)。
案内されたお部屋にて、事前説明を受けます。
「法廷ガイド」というリーフレットを見ながら、これから傍聴する裁判の流れを教えてもらいます。
今回傍聴に選んだのは「窃盗」事件です。
規模の大きい裁判も興味はあったのですが、中学生が傍聴するため、殺人などの内容はちょっと避けたい…と思っていました。弁護士さんにもあらかじめ避けていただくようリクエストしていました。
そうしたら最初の傍聴にちょうどよい内容として窃盗事件を選んでくださりました。
ちょっと珍しいのは「男女共謀による犯行」ということで、どうやら女性の絡む事件は傍聴希望者も多くなる傾向にあると。
そこで少し早めに並びましょう、ということで説明を受けた後すぐに東京地方裁判所(霞が関)に移動しました。
傍聴は原則として着席で行います。立ち見ができないため、確実に傍聴するには少し早く並んでおくことです。ただし注目の裁判などは傍聴者が多くなるため整理券や抽選になります。
法廷前にて
各法廷のドアの付近にこれから行われる裁判について掲示されています。
開始と終了時刻、事件番号と事件名、被告人の名前、今回の内容(新規案件か判決かなど)、担当部、裁判官の名前、書記官の名前が記載されています。
撮影NGですのでメモなどに記録します。
今回は10時開始でしたので、開始時間に入廷しました。
一気に押し寄せる緊張感
傍聴席から見て、向かって右側に検事、左側に弁護士、そして正面に裁判官という配置になります。
検事と弁護士はすでに入廷していて裁判の準備を慌ただしく進めていました。
検事は膨大な証拠資料を持参してくるようなのですが、なぜかその資料を「風呂敷」に包んで持ってきます。
どうやら伝統のようで、この傍聴後、別の機会にたまたま検事経験者の方とお話する機会があり「なんで検事さんは風呂敷を使うんですか?」と伺ったら「あ、そういえば考えたことなかったな。疑問に思わず自前で購入してたわ(笑)」というエピソードを聞くことができました。もし傍聴される方は風呂敷にも注目してみてくださいね。
そして「被告人」が入廷してくるのですが…当たり前と言えば当たり前なのですが、手錠と縄がついた状態です。正直ギョッとしたというか、衝撃を受けました。
もちろんそれは中学生の子供たちもそう思ったようで、一緒に同行してくれた弁護士さんも「子供たちにはいろいろ言うより、あの姿を見せた方が悪いことしないようにしようって思うみたいですよ」とおっしゃってました。百聞は一見にしかず、とはちょっとずれるかもですが、本当に一瞬で緊張感に包まれました。
入廷後は被告人1名につき刑務官2名が両脇にいる状態です。刑務官は被告人の手錠と縄を外していました。
手を伸ばせば届く被告人席に驚愕
そして次にびっくりしたのが、被告人との距離の近さです。
私は3列になっている傍聴席の一番前に座ったのですが、その目の前の柵のすぐ前に被告人が座っているのです。
刑務官が両脇にいるとはいえ、肩を叩こうと思ったら叩ける距離です(汗)。
これにもとても驚きました。
開廷~裁判官入場から冒頭手続き~
ほどなくすると裁判官が入廷してきました。その際にはマナーとして傍聴人も起立し挨拶をします。
その後は着席し、ずっと裁判を見届けるだけ、となります。
最初に人定質問という「本人確認作業」をします。
これが逮捕前に住んでいた住所を番地まで言うのです!
そして検事が今回の内容を伝えます。今回は「男女共謀による窃盗」です。
裁判官から黙秘権について被告人に伝えられます。
そして今回の裁判内容について事実と異なることはないか、異論はないかと裁判官から被告人に質問をします。今回は両被告とも内容を認めていました。
本題~証拠調べ手続き~
そしてメインである冒頭陳述です。今回の窃盗の内容は「某チェーン店にて約4分間の間に化粧品等20万円相当を窃盗。その後転売し換金した」というものでした。
私たちには提示されませんでしたが、検事の持っている資料には膨大な数の証拠写真と思われるものがたくさん貼り付けてありました。
また、これまでの前科についても検事から告げられました。
これは今回の判決を下す材料にも大いになるものだと思いました。
ちなみに男性は前科3犯(主に窃盗)、女性は前科1犯(窃盗とは関係ない内容)でした。
一通り検事の発言が終わると今度は弁護士の出番です。
今回は被告人がすでに犯行を認めているということもあり、ドラマで見るような「異議あり!」的な場面はありませんでした。主に被告人が反省していること、これまでの環境など情状酌量を求めた内容だなという印象でした。
検事、弁護士が発言する際に被告人に質問をします。
そこで被告人は事実として合っていることは合っている、そうでないことは違うと発言し、今回は黙秘権を使っている場面はありませんでした。
裁判官からも被告人に質問をします。そこでも概ね素直に認めている様子でした。
求刑~緊張の弁論手続き~
いよいよ求刑となるわけですが、検事側から出されたのは男性側に「懲役2年」、女性側に「懲役1年6月」というものでした(※今回の事件は2025年3月起訴のため、拘禁刑ではありません)。
男性側の弁護士からの反論はありませんでしたが、女性側は窃盗が初犯であることを鑑み、執行猶予付きが妥当であることを訴えました。
最後に被告人からの発言があり、反省している旨を訴えていました。
裁判官からは約1か月後に同じ法廷で判決を言い渡すことを伝えられ、終了しました。
最後も起立し裁判官に挨拶します。
被告人は再度、手錠と縄が付けられ退廷します。
裁判結果を知る方法
基本的には最後に告げられた日時に判決を聞きにいく方法しかありません。
大きな事件では世間の注目度が高いので報道されることもあります。
今回はたまたまお盆休み中の日程だったので、再度子供と一緒に傍聴しました。
結果について
前回傍聴した法廷とまったく同じところで判決宣言されました。
この日も前回同様に被告人には手錠と縄がついています。
それを外し、裁判官が入廷してきて開始となります。
結果は裁判官が淡々と読み上げます。
男性は求刑通り懲役2年、女性は懲役1年6月の執行猶予4年となりました。
今回の国選弁護士の費用については国負担(私たちの収めた税金)となることも告げられました。
5分もしないうちに終わった、という感じでした。
執行猶予が付いた女性に関しては、もう手錠と縄はありません。そのまま退廷しました。
傍聴をした感想
今回は弁護士さんにあらかじめ裁判の流れを教えてもらっていたことにより、スムーズに理解することができましたが、実際に裁判を聞いた感想としては「分かりやすく説明し、進めているんだな」ということでした。
原則裁判は誰でも傍聴可能です。そのため、誰が聞いても分かるようにという配慮がされているんだな、ということを感じました。
実際に口頭の説明では難しい専門用語を使うような場面はなく、犯行の内容についても法廷で聞いたことだけで十分理解できました。
最初の傍聴が終わったあと、家に帰る前に犯行現場となった系列の某チェーン店に足を運び、防犯カメラの位置を意識しながらそんなに素早く盗むことができるのか検証してみたのですが(実際には盗ってませんよ!)子供と出した答えは「慣れてないと無理だね」ということでした。
常習性が疑われる内容だったな、というのが正直な感想です。
ですので、出された判決結果が決して重いものだと思わなかったのですが、誰かの命が奪われたわけでもなく、誰かの生涯集めた老後資金が奪われたわけでもない事件ではこれくらいが妥当なんだろうなと思いました。
お店にとっては大損害なのは間違いないんですがね(涙)。
傍聴は誰でも参加可能!機会があればぜひ!
ということで長文となりましたが、初めての傍聴体験をお伝えしました。
今回は霞が関の方で傍聴しましたが、これからは立川の方で傍聴してみたいなと思っています。誰でも参加可能ですので、お子さんのいらっしゃる方はぜひ一緒に傍聴してみてくださいね。